2026.10.08
【大家さん向け】高齢者の賃貸入居を受け入れるには?リスクと対策を解説
少子高齢化が進むなか、マンションやアパートを経営するオーナー様にとって、「高齢者の入居をどのように受け入れていくか」は無視できないテーマになっています。
総務省統計局によると、2025年9月15日現在、日本の65歳以上人口は3,619万人で、前年より5万人減少しました。一方、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を更新しています。さらに、75歳以上人口は2,124万人で総人口の17.2%、80歳以上人口は1,289万人で10.5%を占めています。
高齢者人口そのものは前年からわずかに減少したものの、総人口が減少するなかで高齢者の割合は引き続き上昇しており、賃貸住宅市場においても高齢者の住まいをどのように確保していくかが、ますます重要な課題となっています。
(参考:総務省統計局「統計トピックスNo.146 統計からみた我が国の高齢者-『敬老の日』にちなんで-」)
一方、高齢者の入居については、「家賃の支払いは大丈夫だろうか」「室内で急病が起きたらどうするのか」「亡くなった後の契約や残置物はどうなるのか」など、不安を感じるオーナー様も少なくありません。
しかし、高齢者だからという理由だけで入居を避けるのではなく、家賃保証・見守り・契約・緊急対応などの仕組みを事前に整えることが重要です。
本記事では、高齢者を受け入れる際に考えておきたいリスクと具体的な対策、活用できる公的制度について詳しく解説します。
|
|
1. 高齢者の賃貸需要は今後さらに重要に
日本では、高齢化と単身世帯化が同時に進んでいます。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」では、単独世帯は2020年の約2,115万世帯から、2030年には約2,404万世帯へ増加すると推計されています。
(参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」)
こうした人口・世帯構造の変化を踏まえると、今後の賃貸経営では、高齢者を含めた幅広い入居希望者を受け入れられる体制づくりが、空室対策の観点からも重要になってくるでしょう。
一方、国土交通省は、賃貸人が高齢者などの受け入れにあたり、孤独死や死亡後の残置物、家賃滞納などに懸念を持っていることを課題として挙げています。
つまり、高齢者の受け入れでは「入居させる・させない」の二択ではなく、想定されるリスクにどう備えるかが重要なのです。
|
|
2. 高齢者の入居で考えておきたい4つのリスク
物価高そのものを止めることはできませんが、運営方法を見直すことで支出を抑えることは可能です。重要なのは、入居者満足度を下げずにコストを削減することです。
① 家賃滞納などの金銭的リスク
高齢者の場合、年金が主な収入源となっているケースがあります。
公的年金は原則として偶数月に2か月分が支給されるため、毎月の家賃を安定して支払える収支状況かどうかは、入居審査時に確認しておきたいポイントです。
ただし、「高齢者=家賃を滞納しやすい」と一律に判断するのは適切ではありません。年齢だけで判断するのではなく、収入や資産、保証会社の利用可否などを総合的に確認することが大切です。
② 急病・孤立死など健康面のリスク
単身高齢者の場合、室内で転倒したり急病になったりしても、周囲が異変に気づくまで時間がかかる可能性があります。
内閣府の「令和8年版 高齢社会白書」によると、東京23区内における一人暮らしの65歳以上の方の自宅での死亡件数は、2024年に5,302件となっています。(参考:内閣府「令和8年版 高齢社会白書」)
賃貸経営で特に注意したいのは、亡くなること自体ではなく、「発見が遅れること」です。発見まで時間がかかると、室内の清掃や消臭、原状回復などの負担が大きくなる可能性があります。
なお、室内で人が亡くなった場合に、必ず次の入居者への告知が必要になるわけではありません。国土交通省のガイドラインでは、自然死や日常生活における不慮の死については原則として告知不要とされるなど、死因や特殊清掃の有無などによって取り扱いが異なります。(参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」)
③ 火災・漏水など事故のリスク
加齢による身体機能や認知機能の変化によって、コンロや暖房器具などの使用時に事故が起こる可能性も考えておく必要があります。
火災だけでなく、水道の閉め忘れや設備操作のミスによる漏水などが発生すれば、本人の住戸だけでなく周囲の入居者にも影響することがあります。
こうした事故は高齢者だけに起こるものではありませんが、設備面から予防策を講じておくことは重要です。
④ 死亡後の契約解除・残置物のリスク
単身高齢者を受け入れる際、特に事前準備が重要なのが、入居者様が亡くなった後の対応です。
賃貸借契約は、入居者様が亡くなったからといって自動的に終了するものではありません。また、室内に残された家具や家財を、オーナー様の判断だけで処分することもできません。
相続人の所在が分からない場合などには、契約終了や残置物処理に時間を要する可能性があります。
国土交通省も、この「残置物リスク」が単身高齢者の入居をオーナー様がためらう要因の一つとしており、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。
(参考:国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」)
|
|
3.高齢者を受け入れるためにオーナー様ができる5つの対策
① 家賃債務保証を活用する
家賃滞納への備えとして、家賃債務保証会社の利用を検討しましょう。
親族による連帯保証だけに頼らず、保証会社を利用することで、家賃滞納時のオーナー様の負担を軽減できます。
保証内容や審査基準は会社によって異なるため、高齢者の利用実績や保証範囲を確認することがポイントです。
② 見守り・安否確認の仕組みをつくる
単身高齢者の場合、定期的に安否を確認できる仕組みがあると安心です。
人感センサーや電気使用量などを利用したIoT型見守りサービスのほか、電話や訪問による確認など、さまざまな方法があります。
大切なのは、「異変を検知すること」だけではありません。異常を検知した後、誰に連絡し、誰が現場を確認するのかまで決めておくことが重要です。
③ 死亡後の契約・残置物について事前に整理する
国土交通省と法務省が公表している「残置物の処理等に関するモデル契約条項」では、賃借人が亡くなった場合の賃貸借契約の解除や残置物処理について、あらかじめ第三者へ委任する仕組みが示されています。
(参考:国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」)
ただし、契約内容や受任者の選定には法的な注意点があります。モデル条項をそのまま自己判断で追加するのではなく、管理会社や弁護士・司法書士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。
④ 住戸の安全性を見直す
高齢者を受け入れる場合は、建物や室内設備も確認してみましょう。
たとえば、手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更、火災警報器や安全性の高い調理設備への更新などが考えられます。
転倒や火災などのリスクを減らす設備は、高齢者だけでなく他の入居者にとっても暮らしやすさにつながります。
⑤ 夜間・休日を含めた緊急対応体制を整える
設備トラブルや異変は、管理会社の営業時間内に発生するとは限りません。
「夜間に漏水した」「火災警報器が作動した」といった際に、連絡先や初動対応の流れが決まっているかを確認しておきましょう。
24時間365日の監視・緊急対応体制を整えておくことは、高齢者の受け入れに限らず、建物全体の安心感を高めることにつながります。
|
|
4. 住宅セーフティネット制度など公的制度も活用
高齢者をはじめ、住まいの確保に配慮が必要な方を支援するため、国は「住宅セーフティネット制度」を整備しています。
(参考:国土交通省「住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~」)
さらに、2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行され、「居住サポート住宅」制度がスタートしました。
(参考:国土交通省「居住サポート住宅 情報提供システム」)
居住サポート住宅では、大家さんと居住支援法人などが連携し、
- 日常的な安否確認
- 訪問などによる見守り
- 生活や心身の状況が不安定になった場合の福祉サービスへのつなぎ
などを行います。
また、住宅セーフティネット制度には、一定の要件を満たす住宅の改修費などを支援する仕組みもあります。2026年度も、セーフティネット専用住宅や居住サポート住宅への改修を支援する国の補助事業が実施されています。
(参考:国土交通省「令和8年度『セーフティネット専用住宅改修事業』・『居住サポート住宅改修事業』」)
制度や補助内容は年度・自治体・住宅の条件によって異なるため、実際に利用する際は国土交通省や所在地の自治体などの最新情報をご確認ください。
|
|
5.満室経営の第一歩「賃料査定・空室対策レポート」の活用
高齢者を含めた幅広い入居希望者を受け入れていくためには、物件がある地域の人口構成や入居ニーズを把握し、それぞれの物件に合った募集戦略を考えることも重要です。
愛信ファシリティーズでは、客観的なデータに基づいた「賃料査定・空室対策レポート(満室経営戦略レポート)」を無料でご提供しております。

当社の「賃料査定・空室対策レポート」では、累計100億件超の不動産ビッグデータをAI(人工知能)が解析し、オーナー様の物件だけの最適な「満室経営戦略」をご提案します。
現在の市場における正確な賃料査定結果や、競合に勝つための推奨ターゲット、導入すべき設備、入居条件の緩和案などを即時にレポートとして出力します。

高齢者の入居を検討する場合も、単に「受け入れる・受け入れない」で判断するのではなく、物件がある地域の人口構成や入居ニーズ、競合物件の状況を把握したうえで募集戦略を考えることが大切です。
「現在の賃料は適正なのか」「どのような入居者をターゲットにすべきか」「設備や募集条件を見直した方がよいのか」とお悩みのオーナー様は、今後の空室対策を考える判断材料としてぜひご活用ください。
|
|
6. まとめ|仕組みを整えて選ばれる賃貸物件へ
これからの賃貸経営では、高齢者を含めた幅広い入居希望者に対応できる体制づくりが、より重要になっていくと考えられます。
もちろん、家賃滞納や急病、孤立死、残置物など、事前に考えておくべき課題はあります。しかし、
「家賃保証」「見守り」「契約」「安全な設備」「緊急対応」
という5つのポイントを押さえておけば、オーナー様側のリスクを抑えながら受け入れやすい環境をつくることができます。
重要なのは、高齢者の入居を一律に「リスク」と考えるのではなく、どのような仕組みがあれば安心して貸せるのかを考えることです。
「高齢者の入居を受け入れるために管理体制を見直したい」「空室対策について相談したい」など、賃貸経営や建物管理についてお悩みのオーナー様は、愛信ファシリティーズまでお気軽にご相談ください。



