2026.07.27
マンション・アパート経営で家賃を上げるには?適正賃料の見直しと交渉方法
近年、物価の上昇や建築資材の高騰などを背景に、アパートやマンションの「家賃」にも上昇の波が押し寄せています。これまで日本では、一度決めた家賃を上げることは難しいとされてきました。
しかし、維持費や税負担が増加する中、収益性を保つために家賃の値上げを検討するオーナー様が増えています。
とはいえ、家賃は貸主が一方的に値上げできるものではなく、適切な手続きと入居者との交渉が不可欠です。強引な交渉は退去や訴訟といったトラブルを招く恐れがあります。
本コラムでは、家賃を値上げするための法的な条件や相場、入居者とトラブルにならないための交渉手順、そしてスムーズに合意を得るためのポイントを詳しく解説していきます。
「家賃を適正な価格に見直したいが、入居者との交渉が不安」「物件の収益性が低下していて悩んでいる」といったお悩みをお持ちのオーナー様は、不動産管理と賃貸経営のプロフェッショナルである愛信ファシリティーズ へ、ぜひお気軽にご相談ください。
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1.今、なぜ「家賃値上げ」の時代なのか?
賃貸アパート・マンションの家賃は長らく横ばいが続いていましたが、近年になって「家賃を見直すべき時代」が来ていると言われています。その背景には、大きく3つの要因があります。
1-1. 物価高騰と維持管理コストの上昇
総務省統計局が公表している「消費者物価指数」によると、2026年5月分の総合指数は2020年を100として113.5となり、前年同月比でも上昇しています。
物価上昇は、賃貸経営における人件費、清掃費、設備の修繕費、共用部の水道光熱費など、さまざまな維持管理コストの増加に直結します。(参考:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年5月分」)
運営コストが上昇しているにもかかわらず家賃を据え置いたままにしていると、実質的な収益性は下がっていきます。
特に、建物の老朽化に伴う修繕費や設備交換費用が増えている物件では、家賃の改定は単なる収入アップではなく、安定した賃貸経営を維持するための必要な対応といえます。
1-2. 家賃は不動産価格の「遅行指数」である
もう一つの重要な要因は、不動産価格の上昇です。家賃には、不動産価格の変動から遅れて動く「遅行指数」という特徴があります。
不動産価格は売主と買主の単発の同意で決まるのに対し、家賃は貸主と借主の継続的な契約関係によって成り立つため、急激な変化にすぐ反応しにくい性質があります。
近年、新築分譲マンションや土地価格の上昇が続く中、賃貸市場においても少しずつ家賃上昇の傾向が見られるようになっています。
家賃はすぐに大きく動くものではありませんが、不動産価格や物価の上昇が長期化すれば、いずれ賃料水準にも影響が及びます。
1-3. 全国的に広がる家賃上昇のトレンド
家賃上昇の波は都市部を中心に広がっており、空室リスクが低い物件や、周辺相場と比べて明らかに家賃が安い物件では、家賃の見直しを検討する余地があります。
例えば、所有戸数が12戸あり、全室で月5,000円の値上げが実現できた場合、家賃収入は年間で72万円増加します。
これが15年間続けば、累計で1,000万円以上の収入差になります。
もちろん、すべての物件で一律に値上げできるわけではありませんが、相場より安いまま放置することは、本来得られるはずの利益を逃している可能性があるということです。
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2.貸主が家賃を値上げできる「正当な理由」とは?(借地借家法第32条)
日本では「借地借家法」によって借主(入居者)の権利が強く保護されています。
そのため、海外のように「もっと高い家賃を払う人がいるから」という理由だけで、現在の借主を退去させたり、一方的に家賃を上げたりすることはできません。
しかし、借地借家法第32条では、一定の条件を満たす場合に、貸主または借主が賃料の増減を請求できる権利が認められています。(参考:e-Gov法令検索「借地借家法 第32条」)
2-1. 土地・建物の固定資産税などの負担が増加したとき
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地や建物の評価額をもとに算出されます。周辺エリアの再開発などで地価が上昇し、土地や建物の評価額が上がると、固定資産税の負担も増加します。
固定資産税などの税負担が増え、従来の家賃では賃貸経営の収支が不相当になった場合は、家賃値上げの正当な理由の一つになり得ます。(参考:総務省「固定資産税」)
2-2. 土地・建物の価格が上昇し経済事情が変動したとき
物価の上昇や土地・建物価格の上昇など、経済事情が変動して従来の家賃が不相当となった場合も、賃料増額の理由になります。
また、貸主が建物の価値を向上させるために大規模な改装やリノベーションを行った場合も、物件の利便性や快適性が向上した結果として、家賃改定を検討する余地があります。
ただし、その場合も一方的に通知するだけではなく、入居者へ工事内容やメリットを説明し、理解を得ながら進めることが重要です。
2-3. 近隣の類似物件と比較して家賃が不相当(安すぎる)になったとき
同じエリアの類似物件と比較して、現在の家賃が明らかに安くなっている場合も、家賃の見直しを検討できます。
長期入居者が多い物件では、何年も家賃を据え置いているうちに、周辺相場とのズレが大きくなることがあります。
例えば、同じ駅距離・同じ間取り・同程度の築年数の物件が月7万円で募集されているのに、自社物件だけが月6万円台前半で貸し続けられている場合、相場との乖離を根拠として、賃料増額を説明しやすくなります。
2-4. 【注意】値上げが認められない不当なケース
一方で、以下のような場合は値上げが認められにくいため注意が必要です。
まず、「家賃収入を増やしたい」「借金の返済に充てたい」といったオーナーの自己都合のみを理由とした値上げは、入居者にとって不公平であり、正当な理由として認められにくいと考えられます。
また、契約書に「一定期間は家賃を増減しない」といった特約がある場合は、その契約内容に従う必要があります。
さらに、周辺相場を大幅に上回る過剰な値上げも認められにくいケースです。入居者の生活に大きな負担を与えるような値上げは、交渉が難航しやすく、退去や法的トラブルにつながる恐れがあります。
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3.家賃の値上げ相場と適正な賃料の算出方法
では、実際にどの程度の金額であれば値上げが受け入れられやすいのでしょうか。
3-1. 家賃値上げの相場はいくら?
家賃値上げの幅は、一般的には月1,000円〜3,000円程度から検討されることが多いとされています。
もちろん、物件の立地や築年数、現在の家賃水準、周辺相場との差によって適正な金額は変わります。
継続入居中の借主に対する家賃交渉では、急激な値上げは反発を招きやすいため、最初から大幅な増額を求めるのではなく、相場や入居者の負担感を考慮した現実的な金額設定が重要です。
特に、入居者にとって家賃の値上げは「毎月の固定費が増える」という大きな負担です。
値上げ幅が小さくても心理的な抵抗は生じるため、金額の妥当性だけでなく、説明の仕方やタイミングも重要になります。
3-2. 適正賃料を算出する4つの専門的な方法
裁判や調停などで適正な賃料(相当賃料)を算出する際、不動産鑑定士などの専門家は主に以下の4つの方法を用いて計算します。
差額配分法は、対象物件の適正賃料と実際の賃料との差額を算出し、契約内容や経緯を総合的に勘案して、貸主に帰属すべき額を現在の家賃に加算する方法です。
利回り法は、不動産の基礎価格に継続賃料利回りを掛け、必要諸経費を足して算出する方法です。
スライド法は、直近で家賃を合意した時点の純賃料に、消費者物価指数などの変動率を掛け、必要諸経費を足して算出する方法です。
消費者物価指数は、物価変動を示す客観的な資料として、家賃見直しの説明資料に活用できます。(参考:総務省統計局「消費者物価指数」)
賃貸事例比較法は、近隣にある条件が似た物件の現在の家賃相場を参考に、適正な家賃を算定する方法です。
これらを一般のオーナー様が自力で正確に計算するのは難しいため、交渉を有利に進めるには、不動産管理会社に周辺相場を調査してもらう、必要に応じて不動産鑑定士の評価書を取得するなど、客観的な資料を用意することが有効です。
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4.トラブルを防ぐ!スムーズな家賃値上げの交渉手順とコツ
家賃の値上げは、入居者にとって「支出が増えるだけ」と受け止められやすい内容です。そのため、一方的な通告ではなく、段階を踏んだ丁寧な交渉が不可欠です。
4-1. 値上げのタイミングと書面による事前通知
家賃の値上げは原則としていつでも交渉可能ですが、実務上は「賃貸借契約の更新のタイミング」に合わせるのが最も自然です。
交渉には時間がかかるため、最低でも更新の2〜3ヶ月前には、書面で丁寧にお願いをする形で通知を出します。書面には、「いつから」「いくらに」「なぜ上げるのか」を明記します。
また、後々のトラブルを防ぐため、通知した事実を残したい場合は、内容証明郵便の利用を検討することもあります。
ただし、最初から強い印象を与えすぎると入居者との関係が悪化する恐れもあるため、状況に応じて使い分けることが大切です。
4-2. 客観的な根拠データの提示と丁寧な説明
入居者から合意を得るには、値上げの「正当な理由」を納得してもらう必要があります。
「固定資産税がどの程度上がったのか」「周辺の類似物件の家賃相場がいくらなのか」「建物管理費や修繕費がどの程度増えているのか」といった客観的なデータを提示しながら説明することが重要です。
また、「同じ物件内の全ての入居者に同様のお願いをしている」と伝えることで、不公平感を和らげることもできます。
入居者にとって大切なのは、自分だけが不利な扱いを受けているわけではないと理解できることです。
4-3. 段階的な増額と入居者メリットの提供
目標とする金額に一度に引き上げようとすると、強い反発を招く恐れがあります。例えば最終的に5,000円上げたい場合でも、初年度は2,000円、次回更新時にさらに見直すなど、段階的な増額を検討するのも有効です。
また、家賃を上げる代わりに入居者へメリットを提供することで、交渉がまとまりやすくなります。
具体的には、次回更新料を無料にする、無料Wi-Fiを導入する、宅配ボックスを設置する、古くなったエアコンを新品に交換するなどが考えられます。
家賃値上げは、単なる負担増として伝えるのではなく、「物件の住みやすさを維持・向上させるための見直し」として説明することが大切です。
4-4. プロ(不動産管理会社)を間に立てる重要性
家賃交渉をオーナー様が直接行うと、入居者に高圧的な印象を与えたり、感情的な言い合いになったりすることがあります。
また、入居者が「退去を促されている」と誤解してしまうリスクもあります。
そのため、オーナー様と入居者の間に立って公平かつ冷静に説明できる不動産管理会社へ交渉窓口を依頼することが重要です。
経験豊富な管理会社であれば、入居者の要望も汲み取りながら、妥協点を探り、トラブルを避けた形で交渉を進めることができます。
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5.交渉が難航した場合に想定されるリスクと法的対応
誠実に説明をしても、すべての入居者が家賃の値上げに応じてくれるとは限りません。交渉が難航した場合のリスクと対応方法を理解しておくことも重要です。
5-1. 入居者からの提案拒否と「法定更新」の仕組み
入居者は、家賃の値上げ提案を拒否する権利を持っています。交渉がまとまらないまま契約の更新時期を迎えた場合、従前の条件のまま契約が自動的に更新される「法定更新」となる可能性があります。
法定更新となると、貸主側が期待していた新たな条件での更新ができず、状況が据え置かれることになります。
そのため、更新時期の直前に急いで交渉するのではなく、できるだけ早い段階から入居者に説明し、時間に余裕を持って合意形成を進めることが大切です。
5-2. 家賃の受け取り拒否と「供託制度」によるトラブル
交渉がこじれた際、オーナー様が「値上げに応じないなら家賃は受け取らない」と対応してしまうケースがあります。
しかし、入居者が従来の家賃を法務局へ預ける「供託」という手続きを行った場合、法的には家賃を支払っているものと扱われる可能性があります。(参考:法務省「供託」)
つまり、家賃の受け取りを拒否しても、入居者側が供託すれば「滞納」とは扱いにくくなります。結果として、契約解除や退去請求につなげることは難しく、問題が長期化する恐れがあります。
5-3. 調停・訴訟への発展と「空室から値上げする」代替案
どうしても合意に至らない場合、簡易裁判所に調停を申し立て、第三者を交えて話し合いを行うことになります。裁判所では、賃料増減額請求に関する調停申立書の書式も公開されています。(参考:裁判所「民事調停で使う書式」)
それでも解決しなければ訴訟へ発展する可能性もありますが、弁護士費用や不動産鑑定費用が発生し、時間も大きくかかります。
そのため、すべての入居者に対して一律に値上げを求めるのではなく、合意が得られた部屋から順次見直す、または退去が発生した空室から新たな募集賃料を引き上げるという方法も現実的です。
募集家賃を上げても反響がある場合、その金額が市場に受け入れられている一つの証明になります。
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6. 空室対策の第一歩「賃料査定・空室対策レポート」の活用
退去時の原状回復トラブルを適切に防ぐことは、賃貸経営の安定化に直結します。そして退去後の空室をいかに早く埋めるかが、オーナー様にとって次の課題となります。
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7.おわりに
アパート・マンションの家賃は、物価や不動産価格の上昇、固定資産税の増加といった経済事情の変動や、周辺相場との乖離といった「正当な理由」があれば、借地借家法に基づき値上げを請求することが可能です。
しかし、一方的な通告は「追い出し行為」と受け取られたり、訴訟などのトラブルを招いたりする恐れがあります。
家賃の値上げ幅は現実的な範囲に抑え、更新の数ヶ月前からの事前通知、客観的データの提示、入居者へのメリット提供を組み合わせた丁寧な交渉が求められます。
交渉が難航した場合は、不動産管理会社と連携し、時には空室からの募集賃料引き上げに切り替えるなど、柔軟な対応を取ることが賃貸経営の安定化につながります。
「家賃を上げたいが、トラブルにならないか心配」「適切な値上げ幅がわからないので相談に乗ってほしい」といったオーナー様は、お見積もり・ご相談は基本無料ですので、ぜひ愛信ファシリティーズまでお気軽にお問い合わせください。


